こんにちは。はすみ歯科クリニック歯科衛生士の追立です。
令和6年度の診療報酬改定が、6月1日に施行されました。
歯科の保険システムも大きく変わり、子供から高齢期の方まで口腔機能管理・サポートする内容も保険項目に加算されました。
それに関連して、今回はお子さんに多く見られる『口腔機能発達不全症』についてお話します。
《口腔機能発達不全症とは?》
口腔機能発達不全症とは、「食べる」「話す」「鼻で呼吸できる」などの口腔機能が十分に発達していないか、正常な機能獲得が出来ていない状態を指します。
しかし明らかな摂食機能障害の原因疾患はないとされています。
具体的には、咀嚼や嚥下がうまくできない、構音の異常、口呼吸などが認められることがあります。
患者さん自身に、自覚症状があまりない場合も多いです。
その中でも特に、日常的にお口が開いている「お口ポカン」状態は、「口唇閉鎖不全症」とも言われ、2021年の調査では3~12歳で約3割とされています。
口呼吸は、お口が乾燥することで
・むし歯・歯周病のリスクが上がる
・風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる
・口臭
・呼吸がしづらくなることで、姿勢が悪くなる原因にもなり、集中力低下も起こりやすくなる
また、お口周りの筋肉や顎の骨の発達不全が起きることにより
・顔のゆがみが生じる
・歯並びが悪くなる
など様々な事が引き起こされるとされています。
口腔機能発達不全症は、18歳未満の子供が治療の保険適応対象になります。
《お子さんのこんな状態を気になってはいませんか?》
・普段からお口がポカンと開いていることが多い
・口呼吸
・むし歯がある
・発音が気になる、滑舌が悪い
・歯並びが悪い
・食べるのに時間がかかる、または食べるのが早過ぎる
・飲み込むときに舌を出す
・姿勢が悪い
・睡眠時にいびきがある
・やせている、または肥満
・指しゃぶり、唇や爪を噛むなどの癖がある
《口腔機能発達不全症の治療》
自宅で行う主なトレーニング方法
◆スポットポジション(正しい舌の位置を覚える)
スポットポジションとは、安静時やものを飲み込む際での正しい舌の位置を指し、
上の前歯の裏側の歯肉にある膨らみを「スポット」と言います。
舌のトレーニング(大野粛英 著)から引用
日常的に舌の先がスポットに触れており、舌全体が上あごにくっついている状態が正常な状態といえます。
①木製のスティック(アイスの棒などでOK)をスポットに5秒間当てます。
②スティックを離し、舌の先をスポットに5秒間つけます。
一連の動作を10回繰り返します。
この時、舌の先を丸めないように意識してください。
◆ポッピング(舌を持ち上げる力をつける)
①舌の先をスポットに付けた状態にします。
②舌全体を上あごに吸い上げ、大きく口を開けて舌小帯(舌の裏にあるヒモ)を伸ばします。
③上あごをはじくように「ポン!」と音を出すように離します。
一連の動作を10~15回繰り返します。
スポットポジション同様、舌を丸めないよう意識してください。
◆あいうべ体操(口呼吸を鼻呼吸に改善する口の体操)
①「あー」と口を大きく開く。
②「いー」と口を大きく横に広げる。
③「うー」と口を強く前に突き出す。
④「べー」と舌を下方向に伸ばす。
一連の動作を1セットとし、1日30セットを目標にしましょう!
声は出さなくても構いませんが、お子さんの場合は声を出した方がトレーニングの感覚がつかみやすいかもしれません。
口腔機能発達不全症は、正常な噛み合わせやきれいな歯並びを獲得することが、治療のゴールではありません。
治療のゴールである「食べる」「話す」機能を十分に発達させるためには、正しい咀嚼・嚥下・呼吸を習得する必要があります。
訓練や指導によって口腔機能が十分に発達していない部分を、正常なかみ合わせやきれいな歯並び、バランスのとれた顔貌に導いていくことが出来ます。
お口を含め気になることがないか、または変わりがないかを継続的に診てもらうためにも、歯科医院での定期検診で確認してもらいましょう!