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歯を強くするフッ素の役割とは

こんにちは。はすみ歯科クリニック歯科衛生士の追立です。

虫歯予防として広く浸透しているフッ素。
現在、市販の歯磨き粉の9割がフッ素配合とも言われています。
歯医者で塗ったことがある方も多いのではないでしょうか。


しかし「虫歯予防で使われているフッ素はどんな効果があるのか?」
「歯医者で塗るフッ素と、自宅で使うフッ素配合歯磨き粉の違いは何?」
等疑問に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今月のテーマは『歯を強くするフッ素の役割について』です。

 
 

≪虫歯予防に使われるフッ素の役割≫

フッ素の役割は大きく3つに分かれます。
①虫歯菌の働きを弱める
プラーク(歯垢)に含まれる虫歯菌は、飲食物に含まれる糖分から「酸」を作り出します。
その酸が歯を溶かすことで穴があき、虫歯になってしまいます。

 
 
フッ素には虫歯菌の活動を抑制することで、酸の量を減らす働きがあります。

フッ素塗布を行うことにより歯を溶かされることがなくなるため虫歯予防に効果があります。

②歯の「再石灰化」を促進する
歯は食事のたびに、虫歯菌から作られた「酸」によってカルシウムやリンなどのミネラルが溶け出す「脱灰」をし、唾液に含まれる成分が歯の表面を修復する「再石灰化」の働きを常に繰り返しており、
この「脱灰」と「再石灰化」バランスが取れていれば健康な状態と言われています。

食べ物や飲み物のダラダラ食べを続けると、虫歯菌が酸を作る状態が続いて脱灰の時間が長くなります。
そうすると再石灰化の時間は短くなり、歯の修復が追いつきません。

その状態が続くと歯の表面に穴が開き、虫歯になりやすくなります。

しかし唾液中にフッ素イオンが存在していると、溶けだしているミネラルが、より多く歯の質に再吸収され沈着します。
そのためフッ素塗布をしていれば再石灰化を促進してくれます。

また、フッ素で再石灰化を促した歯は、酸に強くなるため、むし歯になりにくくなります。



③歯質の強化
歯は「ハイドロキシアパタイト」という物質で構成されています。
この物質は酸によって溶けやすい性質を持っており、酸に触れることで「脱灰」が始まります。
そして「再石灰化」が始まる際、フッ素と結合することで「フルオロアパタイト」と呼ばれる硬い構造へと作り変えられます。この働きにより歯を酸に溶けにくい性質に変え、歯の質が強化されます。
それによって初期虫歯の発生を防ぐことができます。
フッ素を塗ることによって『虫歯菌の働きを弱める』『歯の「再石灰化」を促進する』『歯質の強化』3つの作用により虫歯の発生と進行を防ぎます。


≪ご自宅で行うフッ素を使った虫歯予防≫


*フッ素成分配合の歯磨き粉を使用する

歯医者で行うフッ素塗布に比べ、フッ素入り歯磨き粉は、毎日使うことから低濃度のフッ素が配合されています。
歯みがき粉の成分表に「フッ化ナトリウム」もしくは「モノフルオロリン酸ナトリウム」と記載されているものはフッ素入りなので、そちらを選択するようにしましょう。

歯磨き粉は決められた分量を使い、軽くすすぎましょう。
何度もすすぐと、口の中に留まるフッ素成分の量が減ってしまうため、うがいは軽く済ませてください。

*ジェルタイプの歯磨き粉もおすすめです
ジェルタイプは細かな隙間に浸透し、隅々までフッ素などの薬効成分がはたらかせます。
泡立たないためペーストタイプに慣れている人は物足りなさを感じるかもしれませんが、鏡で歯を見ながら磨きやすく、磨き残しのチェックもしやすいのが利点です。

ジェルタイプは滞留性が高いため、フッ素を歯面にコーティングすることもできます。
食後は早めに歯を磨くようにして、歯磨き後1~2時間は飲食を控えると、さらにむし歯予防につながります。また、就寝時は唾液の分泌量が減るため、就寝前にはより丁寧に歯を磨きましょう。

*手軽なフッ素洗口液
歯磨き粉のほかに自宅で使用できるものとして、フッ素が含まれている洗口剤もおすすめです。
歯磨きの後に仕上げとして使い、洗口剤で口をゆすいだ後は、水ですすぐ必要はありません。
すすいでしまうと、フッ素が流れ出てしまうためです。


≪歯科医院で行うフッ素塗布≫


歯科医院では高濃度のフッ素を使用しています。
そのため歯に直接塗布できるのは、歯科医師や歯科衛生士と決められています。

歯医者に行くと、プラーク(歯垢)や歯石などを取り除き歯をきれいにした状態でフッ素を塗布してもらえることもメリットです。
塗布後は飲食やうがいなど、一定時間の制限がかかりますので注意事項を守るようにしてください。


≪フッ素の安全性≫

虫歯予防に大切なフッ素ですが、健康に害がないのか、体に危険性はあるのか等心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
フッ素は体内に存在しており、普段口にしている野菜・お肉・魚介類・お茶や清涼飲料水などのほとんどの食品にも含まれています。
そのため、少量のフッ素を口に含んでも問題ありません。
しかし大量に摂取することでフッ素の中毒症状が現れることがあり、歯が生え始める頃に過剰摂取した場合、歯に白や褐色の斑点、シミなどが発生する「歯牙フッ素症」を引き起こす恐れがあります。
ただフッ素配合歯磨き粉は「わざとたくさん飲み込む」ようなことがない限り、危険性はありません。
例えば体重50kgの成人女性の場合、フッ素配合の歯磨き粉2~3本を一気に飲み込むレベルであり、
フッ素中毒が問題になりやすいのは、水道水にフッ素が添加されている海外のケースです。

フッ素は用量・使い方を守って使用すれば問題はありません。
歯医者で行うフッ素塗布というのは、適正な濃度を歯の表面に少量塗るため中毒症状が現れることはまずありませんし安全ですので、ご安心なさってくださいね。

フッ素は高い虫歯予防の働きを期待できる、とても頼もしい存在です。
ですがフッ素を使用したからといって、必ず虫歯が防げるわけではありません。
虫歯予防のためには、普段の歯磨きやフロスなどを使ったセルフケア・歯科医院での定期的なクリーニングなどが必須です。
お口の状態を診てもらうためにも、定期検診に行きましょう!


監修 歯科医師 蓮見卓真